よりみち散歩 #10 ジャズの街 吉祥寺

なぜジャズのお店がこんなにあるのか

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こちらは「吉祥寺 ジャズ」で検索したマップの結果である。クリックすると実際のマップにも移動できるが、下の画面ではなんとなく面積も求めてみた。sanpo#10-2squareおよそ43000坪の面積とはどんなものか換算すると…

sanpo#10-3amountおよそ0.15平方Kmにお店が15件表示されたことになる。ここまで計算しておいてなんだが、これでは多いのか少ないのかはよくわからない。

ただ、今でもジャズを扱っているお店はこのマップより多くあることを私は知っている。

ではなぜ吉祥寺でジャズが溢れているのか、勝手に調査してみた。

ジャズと喫茶の背景

ジャズは19世紀末から20世紀初頭にかけて、アメリカ南部の都市部で出来上がってきた。もとはいわゆる歌のブルースからメロディー楽器に移り変わり、小編成のバンドやディキシーランド、ビックバンド、フリージャズなどと急速かつ無限に形を広げ、今なお発展している。音楽の背景に関してはもっと詳しく述べたいところだが、今回はやめておこう。
今触れている「ジャズ」とは主に小編成のインストゥルメンタル楽曲(もちろんヴォーカルもある)で、少し音源の古いCDをイメージしていただけると話が早い。1940年代のビバッブという即興演奏が最もなじみ深いであろう。マイルス・デイビスやジョン・コルトレーンという名前を知らなくても、彼らの音楽を聞いたことが無い人はほとんど居ないだろう。以下にアート・ブレイキーとジョン・コルトレーンの有名な曲を貼ることにする。(マイルス・デイビスの曲に関しては迷った末、貼るのはやめることにする)

アート・ブレイキー Moanin’

ジョン・コルトレーン Blue Train

ジャズ喫茶は当時希少価値の高かった音源=レコードをコーヒー代で好きなだけ聞くことができる貴重な場だったのだ。今でこそスタンダードジャズの楽譜は山ほどある。最も有名なものはThe Real Bookだろう。

The Real Book

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だが当時は耳コピが当たり前だった。お客さんはジャズ喫茶に通い、曲を覚え、演奏活動をする人であればそのソロまでコピーして、貴重なレパートリーを体得して行ったのである。そして当時のジャズ喫茶のほとんどは厳かな雰囲気で、私語厳禁だったという話だ。

今となってはジャズ喫茶はかなりオープンになった。ファンには怒られるが、ジャズが流れているスターバックス(実はスタバはジャズのCDを沢山出している)やエクセルシオールでさえも広い括りではジャズ喫茶と言えてしまうのかもしれない。

ジャズの店が多い理由:4つの仮説

・仮説1:ジャズ喫茶ブーム

1960~1970年代の当時は空前のジャズ喫茶ブームに学生運動があり、モラトリアム・文化的に過ごす人が多かったからというもの。まだネットの無い時代、情報は自分の足で集めるもので、”人によっては”それだけの時間があったのだろう。そして吉祥寺に限らず、全国的に多くのジャズ喫茶が流行っていたそうだ。それはwikipediaで調べても多くの文献がでてくる。

・仮説2:武蔵野市の音楽に対する熱意

吉祥寺ではゴールデンウィークに毎年開催されている「吉音」というイベントがある。今ではあらゆるジャンルが入り混じっているが、2002年以前はジャズコンテストだったそうだ。出演者はプロはもちろん、吉祥寺付近の成蹊大学や亜細亜大学の学生も参加していたそうだ。現在は武蔵野公会堂や、吉祥寺コピス前のスペースでジャズ演奏は継続されている。

・仮説3:吉祥寺ジャズ喫茶の御三家

1980年代に吉祥寺ジャズ喫茶の御三家(寺島靖国氏、大西米寛氏、野口伊織氏)というものがあった。この三人はその当時吉祥寺に様々な形態のジャズ喫茶を生み出してきた。ビバップに強い店、ファンク・クロスオーバーに強い店、ジャズ・ロックに強い店。その当時は流行もあったが、ジャズを流すのではなく「聞かせる」店が20件ほどあったそうだ。そして色々な文献を読んでいくと、新宿よりもずっと先端を行っていた時期もあったそうだ。この三人の尽力によるジャズの定着は大きいだろう。

・仮説4:お店が狭くてもいい

ライブハウスと聞くと、分厚い防音扉があり、鉄筋コンクリートむき出しの天井で、照明に照らされたステージを思い浮かべるかもしれない。だがジャズ喫茶は違う。基本的にお店は小さめだ。扉も普通だし、生音が外に少し漏れていているくらいが安心する。

あまり大きな店を構えなくても営業できることも人気に拍車をかけたのかもしれない。また演奏者と至近距離で演奏を聞くため、基本的に楽器にマイクは無い(ヴォーカルやフルート等の弱音楽器を除く)。プレイヤーにとって見れば一挙手一投足全て見られている気分だ。それは演奏パフォーマンスもストイックにもなる。ナメられてはいけない。CDの様なおしゃれなリバーブも一切無い。だからこそ根強いファンが増えたのだろう。現代に置き換えると、地下アイドルの様なファン心理に近いものがあったのかもしれない。

これらの背景が今の吉祥寺ジャズ愛を密かに育んでいるのではないだろうか?そして類は友を呼び、今の吉祥寺が形成されていったのだと思う。時代の流れと共に淘汰された店も多くなったが、今残っているお店が結果として老舗的なポジションになってきているのだ。しかしジャズの現状は厳しく、昨年(2015年)にもジャズ喫茶が数店閉店(サウンドカフェ・ズミ、The fox hole等)している。今のうちに一度は駆け込んでおいた方が良いかもしれない。

今も残る老舗ジャズ喫茶

今のジャズ喫茶は大きく2つに分かれる。
飲食店としてジャズを流すお店と、ライブハウスとしてジャズ演奏を楽しめるお店だ。ここで私が10年以上お世話になっているジャズ喫茶をご紹介しよう。ここは後者のジャズライブをメインにしているジャズ喫茶だ。

ジャズ喫茶 メグ である。
このお店もさることながら、立地も相当コアな場所だ。

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この看板の横に階段がある。その二階に上がるとすぐにお店の入り口が見えてくる。奥にいるのは店長の新井さん。

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店内に入ると、オーナーである寺島靖国氏の書籍やCDが並べてある。sanpo#10-6counter

なんと言っても名物はコレ

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この巨大なスピーカー!!ドイツ製で名を「アバンギャルド」という。アバンギャルドは仏語で「前衛」という意味だ。とても良い名前だと思う。そしてその口から届けられる音は想像以上にタイトな音だ。優しく包む様な音ではない。是非打ちのめされにきていただきたい。

また面白いのはトイレ内(ちなみに和式)だ

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かつてはひどい落書きだったそうだが、今はご覧の様にプレイヤーのサインだらけである。その中にはこんな人も

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どこにあるか探してみるのも面白い

今は上原ひろみさんの演奏だが、その前まで報道ステーションで使用されていた楽曲「Open Mind」のサックス演奏でも有名な矢野沙織さんのサインか!?

ちなみに作曲は松永貴志さん

この老舗では今夜もジャズが鳴り響く。

店内にはオーナーの寺島氏の人形も鎮座している…私は10年近く通ってご本人にお会い出来たのは一度きりだった(しかも今年)。

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実は紙粘土

勇気を出して一歩踏み出そう

初めてお店に入るには勇気がいるだろう。実際、大学1年生だった私も一人では入れなかった。

しかし一歩踏み出すと、中にはとてもフレンドリーな店員さんが待ち受けていた。私語厳禁(常識の範囲で)は完全に過去のものだ。気がつけばお会計を済ましてからも、店長やプレイヤー達とだらだらと世間話をする仲になってしまった。10年って恐ろしい。

ここは私が知る吉祥寺のお店の中では一番渋い場所だが、他に吉祥寺では、SOMETIMEStringsというジャズ専門のライブハウスがある。2014年にできた40席のキャパを持つ多目的ライブハウスファッションセンターSCARABスカラベというお店もできた。これらのお店を中心とした2014年から始まったJAZZフェスも企画されている。今年はなんと明日の11/12日(土)に開催される予定である。

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4つのジャズライブハウスで様々なジャズアーティストが集結する

少し西荻窪寄りに行けばアケタの店cocopalmなどがあり、荻窪から阿佐ヶ谷(マンハッタンが有名)、高円寺にかけてジャズはとても盛んである。中央線の杉並三駅と呼ばれている地域は音楽文化がとても盛んなのだ。

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