音楽番組収録の音声さん スタジオ収録Protools~後篇~

音楽番組におけるProtoolsの心得 

前回は映像の録り方まで書き、音に関しては何もお話しませんでした。

今回はいよいよ録音についてです。各先輩エンジニアによって流儀が異なるため、ほんの一例までに綴りたいと思います。思うに、Protoolsを回す人はいかにしてミキサーを安心させるかが極めて重要な職務になります。「音が割れている」などと伝えても、気をつけなくては忙しい現場では逆鱗に触れてしまうこともあるです。音が割れる前の微妙な【兆し】を察知したり、フロアに行ってマイキングを実際に見ることは極めて重要なアピールになります。音だけで判断するのではなく、波形も目視することも大切です。

その結果、音が割れていた場合「あのマイクだと、こうなってしまいうる」ことを心技体で想像することができるようになります。これは誰も教えてくれません。先輩の背中を見て学んだ私の独学ですが、似たような職業をやっている人は、是非やるべきだと思います。やればやるほど、色んな意味で救われます。

音が割れるプロセスは大体マイクの位置が近すぎるか、不適切なHAしか無いのです。原因の根本を理解すれば、大体は想像がつくようになります。

Protoolsの初期化〜初期設定

Protoolsはその気になれば、数百トラックを扱えるまでに進化してきました。しかし、番組形態によりますが、最大64チャンネルが目安になるかと思います。つまり、64系統の音を同時に扱うことになります。その内の数チャンネルは、2Mixを収録の予備として入れておいたり、PAさんからいただいた2Mixを予備の予備として録音するのが通例です。それらの素材を取りこぼすことなく、収録できるようにProtoolsの初期設定からはじめます。自分用の資料を過去に作成したものを軸にお話しましょう。※PCはMacです

まずは、初期化をします。この操作をすることで、過去の設定を消します。

Protoolsの初期設定1

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そして、初期設定を行います!

20170812Protoolsの初期設定

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例えばCDは44.1KHz、16bitですが、デジタル信号では一般的に48KHz、24bitで録音します。この方が高解像度のデータ音源になります。その向こう側にいるのが最近流行っているハイレゾ音源になりますが、これは賛否両論ありますね。データを見れば高解像度ですが、収録という目線で見れば、まだ機材の処理が追いつかない現実もあり、48KHz、24bitが良い落とし所となっております。

こまめに⌘+Sで保存しつつ、お好みのセッティングをしていきます。音と映像のフレームレートの一致も大切な設定です。カメラに直接音を入力する場合は別ですが、映像と音をバラバラで録る際は、必ず一致させないと、微妙に時間がずれていってしまいます。特に数時間に及ぶ長い撮影の場合はどんどんずれていって、口がパクパクしてるのに音が合っていないという恐ろしい現象が起きてしまいます。必ず確認しましょう。

業務用機材はとても賢くなっており、テープが回る時の信号(タイムコード)をキャッチして、自動的に録音を開始してくれる機能があります。さらに賢いことに、テープが止まると自動で止まることもできます。しかしながら、私がいた現場はその機能を信じておらず【ジャムシンク】という手動による停止をしておりました。もしも信号を司るケーブルに異常が合った場合、何が起こるかわかりません。

ライブなどの長時間の収録の際は、テープチェンジが発生したりするので、タイムコードを受信しっぱなしの垂れ流し状態で録音をします。この際の注意点は、ライムコードを常に受信しているので、必ず手動で録音を開始しなくてはなりません。バタバタしてていつの間にか始まっていた!なんてことの無いように、余裕を持って録音ボタンを押せるようにしなくてはなりません。

Protoolsの初期設定2

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ケーブルは同軸の場合もあれば光ケーブルだったりもします。ここで設定を正しく選択しないと、音がぜんぜんこない!というトラップにハマります。ここは必ず確認しましょう。稀に、バッファオーバーフローというエラーが出て、録音が止まってしまうことがあります。最初に適切な値にセッティングする必要があります。現場では大体2台のPCで録音しますが、どちらも設定をいい加減にしてしまうと… 結局全滅。ということも有り得るのがこの仕事の恐ろしい所です。万が一、1箇所でも確認していない箇所があった時、本番が終わるまで生きた心地がしません。

Protoolsの初期設定3

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ここまでくると、全ての所作はおまじないです。あなたを安心させるためのルーティンに入ります。いつもの画面に整える。それだけでうまくいくようになる。ここまでくればアスリートの世界です。

さらに、64チャンネル録音する場合は、予めMacのハードディスクにパーテーションを入れておき、32チャンネルずつ録音する場所を切り分けたりします。しかし、最近ではUSB3.0に直接録音しても問題なく収録できてしまうので、過去の作法とも言えるかもしれません。今回は勇気をもって割愛します。

ここまでくれば、後はトライアンドエラーです。必ずミスをします。そして怒られ、嫌になって、それでも頑張って… やがてこの小さな積み重ねから信頼関係が生まれます。ちょっとずつミスをしないための自分ルールを作っていきます。これが先輩達のやってきたことなのかと気が付きます。そう、先輩は教えても教えきれないことを既に知っていたのです。これが職人の世界なんですねぇ。

Protoolsの実践

実践は簡単です。ただ録音ボタンを押すだけです。

大事なのはそれまでのプロセスです。最善を尽くして本番に臨むことだけです。

思わぬProtoolsの操作

スタジオの場合は、大体音合わせ、カメリハ、小休憩(セットやカメラ割りの微修正)、本番という流れで収録します。アーティストは小休憩の時に本衣装に着替えたりします。

現場によりますが、録音をしている時には、必ず歌詞カードを読んでいます。歌い間違えはないか確認したり、演奏にミスがないかを聞いています。これはレコーディング会社の担当者もほぼ必ず聞いているので、ダブルチェックとなります。

さらに、ざっくりと歌い出しにタイムコードのメモを書きます。これで、最悪なにか合った場合、その場でタイムコードを頼りに少しでも早くProtoolsで再生チェックすることができます。音はこの全てのテイクを録音しています。この音が、後々何かあった時に差し替えられる素材になることがあります。

また、通称「お持ち帰り」と言って、レコード会社が音源をその場でテイクアウトして確認(or修正)して出来上がったものを後ではめ直すこともあります。限られた時間で撮影している関係で、口の動きに合っている本番テイクを使わざるを得ないことが多くなります。その際も、素早く、音素材の選定・書き出し、さらに映像も添えたデータファイルをエレガントに対応する技術も必要です。

このような作業を行うことも、しばしばあります。

音声さんとは思えない作業と思われるでしょうし、スタジオエンジニアから見たら、こんな程度かとも思われるでしょう。普段はピンマイクを付けて、会話をミックスしている職業でありながら、定期的に繊細な音楽も扱わないといけない、狭間の存在なのです。

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