あんな音声さん こんな音声さん

みんな音声さん

何気なくテレビを見ていると、当たり前の様に聞こえてくる音があります。これらは全て音声さんの手によって伝えられているのです。チャンネルを回せばニュース・バラエティー・音楽・スポーツなどと様々な映像が送られてきます。

最終的に伝えられている音は一定の基準に整えられ、映像と共に視聴者へ届けられています。これらは最後の形になるまでに、漁師さんの様に素材をとりに行かなくてはならないのです。

スタジオ収録の場合

スタジオ収録は音声界のエースと言えるでしょう。整った環境で音を作ることができ、失敗が許されません(でも失敗はいっぱいあります)。一重にスタジオ収録と言っても様々な形態があるので種類分けをしていきましょう。今回はスタジオ収録についてお話していきます。

バラエティ番組

スタジオイメージ

ゴールデンタイムと呼ばれる19時〜22時の時間帯ではお馴染みの番組ですね。とにかく華やかで、トレンドや最新情報を紹介することが多いです。最新情報と言っても、人気芸人の新ネタから女優がバラエティー番組露出した事実だけでも”最新情報”となりうるのです。昨今のSNSニュースも広まり、2次利用・3次利用・・・最終的にはまとめサイトに行き着く程、テレビは未だにネタの宝庫として取り扱われています。

スタジオ音声の仕事は大きく二手に別れます。それはフロア業務ミキサー業務です。今回はフロアー業務で扱われるマイクについて話して行きましょう。

フロア業務は主にセッティングを担当します。放送では欠かせないワイヤレスマイクを組み立て、いざという時の為の予備のマイクを番組セットに合わせた形で用意します。まずはこちらの”ポータブルベースユニット“と呼ばれているものがあります。放送局各社で呼び方が”オカモチ”や”エンクロージャー”と呼ぶこともある、おなじみの機材です。この箱でワイヤレスピンマイクの音を受信するのです。ワイヤレスの周波数帯は昨年から複雑(1.2G・ホワイトスペース)になり、導入過渡期には多くの音声さんは頭を抱えましたが、それはまた別の機械にお話しましょう。

PB-01

SONY製 ポータブルベースユニット PB-01

そして出演者についているマイクは、こちらのピンマイクになります。下の左手にあるDWR-P01DNという受信機が上のベースユニットに3つ内蔵されています(取り外し可)。

DWR-P01DN

左手が受信機のDWR-P01DNは2波受信可能 右手が送信機(ピンマイク本体)のDWT-B01N/G

他にもメジャーなメーカーにRAMSA(パナソニック製:ロケで圧倒的な信頼度)やSHURE(歌では圧倒的な信頼度)がありますが、近年はマイクを作っている多くのメーカーがワイヤレスマイクを作るようになり、その多様性は大変な賑わいを見せています。しかし、放送で使用されているものはSONYが圧倒的に多いです。それはSONY(スタジオの定番ワイヤレスマイク)の長い開発の歴史と、充実したパーツ・アクセサリーが多いことが挙げられるでしょう。

そして、必ずと言っていい程用意する予備のマイクは”ガンマイク“です。

ブーム

ゼンハイザー製 超指向性マイク(ガンマイク) MKH816

テレビのスタジオでは“ブーム”と呼ばれています。ブームとは長い棒全般を指し、ロケの音声さんが持っている棒もブームに当てはまります。これらはピンマイクが壊れてしまった時や、ピンマイクが付いていない人が急に話を振られた場合などのとっさの時に活躍します。よくある場面として、ディレクターがタレントにイジられた時や、芸人が急に服を脱いでしまいマイクが外れた時などに時々画面の上の方からニョキっと現れます。本当はマイク見えないで音がとれることが理想ですが、それには熟練の技が必要です。ちなみに、見えてはいけないものが見えてしまったことを「見切れ」といい、この場合は「マイクが見切れてる」と言ったりします。

コント番組やドラマ等、ピンマイクが見当たらない場合はほとんどブームで音が録音されています。

生放送番組

ガンマイク意外にもバウンダリーマイクという、平べったく、目立たないマイクをテーブルの上に置くこともあります。バウンダリーマイクは生放送で良く見かけます。代表的な3つのマイクを紹介しましょう。

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AudioTechnica製 AT961R

代表的な国産メーカーであるオーディオテクニカのマイクですが、世間ではイヤホンやヘッドフォンでお世話になっている人が多いのではないでしょうか。こちらのAT-961Rは定番のコンデンサーマイクです。不名誉な名前ですが時折”ゴキブリマイク”と呼ばれることがあります。それはこの平べったさと黒光りした色合いがそうさせているのでしょう。とはいえ、いざというときに大活躍するマイクです。市販は黒色しか見当たりませんが、特注なのか、はたまた自分(美術さん?)で塗ったのか、白色もあるようです。

AT961白

2017.1.27放送 日本テレビ NEWS ZEROより

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PRO43Rは白色がある

同じくオーディオテクニカ製のPRO43Rの特徴は”白いタイプ(PRO43RW)”があります。PRO43RWのWはWhiteの頭文字だと思われます。放送機材は何かと真っ黒で、裏方に徹していますが、番組のセットによっては黒い方が返って目立ってしまうケースが多々あるのです。このPRO43Rは貴重な白いバウンダリーマイクとして活躍しています。

PRO43RW

2017.1.27放送 テレビ東京 ワールドビジネスサテライトより PRO43RWだろうか?

ちなみに2015年のワールドビジネスサテライトのセットはこちら。

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ビデオパスnaviサイトより セットに合わせ黒いAT961Rが使われている

このように、セットに合わせたマイク選びも音声さんの重要な仕事なのです。他にもちょっと変わったバウンダリーマイクがあります。

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SCHOEPS製 BLM-03

高級マイクメーカーSCHOEPSのバウンダリーマイクも時々使われることがあります。最初の2つのオーディオテクニカのマイクは単一指向性で、目の前の音を強く拾ってくれますが、こちらのBLM-03は無指向性です。無指向性はオムニとも呼ばれ、360度から入ってくる音を比較的均等に収音することができます。音に芯が無い代わりに、とりあえず全体的な音がぼやーっと聞こえるのです。音声さんはこれらのマイクの特性を理解した上で、適材適所でマイクを使い分けているのです。

キャスターインカム

これはおまけまでにご紹介します。音声は何も音を録るだけではありません。”あらゆる音“を管理しています。それはスタジオに音を聞かせる簡単なPA業務であれば音声さんがスピーカーをばらまいて対応します。そしてアナウンサーやキャスターには特別にキャスターインカムという物を用意します。

キャスターインカム

フジテレビジョン 新人アナ研修日記2011ブログより

こちらは自分の耳型を採集している様子です。この耳型は耳鼻科に行けば、誰でも型をとることができます。一般的には補聴器のために型をとられますが、プロの歌手やアナウンサーは仕事のために型をとります。中には型をとらず、普通のイヤホンを使う人もいます。それらのイヤホンはこちらのキャッチミーに繋ぎ、アナウンサーの場合は番組全体の音をガイドとして(聞き逃さないように)聞き、場合によってはプロデューサーの指令を聞こえるようにします。

キャッチミー

APPLAUSE SYSTEMS製 C型キャッチミー【送り返し無線機】

キャッチミーと同じ働きをするUNIPEX/WR-C301(Panasonic製)やTOA製のWM-1100が主流となっています。これらは300MHz帯の周波数を利用しており、総合的に”C帯”と呼ばれることもあります。

つまり、耳をしているアナウンサーの後ろにはピンマイクとC帯の2つの機器が取り付けられているのです。

スタジオの大体の基本はこれらがベースになり、内容に合わせて肉付けをしていくことになりますが、今回はここまでにしておきましょう。 

ロケの場合

音声さん

ナタリーより フジテレビTWO「超特急の撮れ高足りてますか?」の一場面(クリックでリンクへ)

皆様お待たせしました。音声さんと言えばコレですね。”ブームマイク”や”サオ”と呼ばれている先にあるのは先ほどのMKH816の半分のサイズのMKH416というマイクが多いです。基本的な性能は一緒ですが、MKH816より指向性が弱くなります。具体的には音の入射角が変わるのですが、これもまた別の機会にお話しましょう。

さて、実はこの格好は”ほぼロケでしかしない“といっても過言ではありません。至近距離で撮影をする前提のロケだからこそ、世の音声さんはこの棒(ブーム)を持っているのです。しかも音声さんはこれに重い重い重〜いミキサーアンプとワイヤレス受信機を持っているのです。出演者が増えるたびに悲鳴が出ます。それでも昔よりはずいぶんと軽くなりました(と先輩によく言われました)。

その様子は音声さん ロケで検索するとたくさんでてきます。映像を見ていただければ分かるかもしれませんが、多くの場合は1人でロケを担当します。そのため、片手でブームを振って、片手でミキサーのつまみを握っているのです。そして、だんだん腕がぷるぷるしてきて…ちょっとずつ下がってきて、カメラマンに「見切れてるよ!」と怒られるのです。他にも気にしなくてはならないのは”“です。マイクを付けられない出演者や、インタビューで急遽ガンマイクを差し込む時、太陽が後ろにあると顔に黒い影がドーン!!なんてことも良くあります。

ロケの音声さんは大変です。

ドラマ撮影の場合

ドラマ撮影は独特の世界と言えるでしょう。この世界だけは私はまともに経験しておりませんが、基本的にはマイクが絶対に映ることが無い番組です。映画と同じと言っても良いでしょう。

基本的にはガンマイクでロケの様に撮影していきます。ロケとは違い、全てのカットが決められており、その都度最適なマイクの場所を探りながらカメラさん・照明さんと共に調整をしていきます。最も一体感のある番組だと思います。しかし、遠くの人の声を録る場面もよくあるものです。その際に、ワイヤレスマイクを服の中に仕込むことがあります。

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Shureマイキングセミナーより

こちらのガムテープを逆に降り立たんで三角形を作り、人によってはウサギの毛等を東急ハンズなどで購入して”服が擦れるガサガサ音”を最小限に食い止めようとがんばります。シーンによって口元が映らない場合はアフレコで声だけを別で録ることもあります。

このようにちょっとテレビとは変わった取り方をしますが、撮影環境・場面が極端なことも多く、撮影チーム全体はとても大変です。具体的には、狭い家のセットだったり、強風吹き荒れる海だったり、車の中だったり、公園だったりと無限のシチュエーションに適応する能力はお見事です。

スポーツ中継の場合

世の中には様々なスポーツがありますが、その全てに必ずガンマイクの存在が隠れています。野球やサッカーをはじめ、プロレスリングから相撲にマラソン、ゴルフすべてにガンマイクが関わっています。

唯一違うのはオーディエンスがたくさんいるということです。

サッカー

サッカーのゴールネット裏

いかにうるさい環境下で、競技の音を録るかが勝負となります。そのため、ガンマイクを周りからたくさん並べることになります。そして出演者も今までとは違い、実況席が登場します。

サタすぽ

北海道文化放送 サタすぽより

ご覧の様に、ヘッドセットマイクが登場します。これも現場のうるさい環境下で声を録らなくてはならないため、マイクを口元に近づけているのです。同時に耳はヘッドホンの役割をしており、本人を含めたMCの声と音声さんが作っている会場の音を聞きながら自然体で話を進めていきます。ここでも実況(アナウンサー役)にプロデューサーの指令を入れることが多いです。

ヘッドセットにすることで、手も空きメモを書きながら放送を進めることができて一石三鳥ですね。ところが、場合によってはヘッドセットでは無く、ハンドマイクを並べるときもあります。その際はマイクから離れられてしまうと音声さんは非常に困ります。ほかにも、長い放送時間であるため、カフという自分で音をしぼることができる器具があります。

(株)スタジオイクイプメント様サイトより

(株)スタジオイクイプメント様サイトより

文字通り”カフ“とは英語で”“を意味します。我々には分からない本人の咳をしたい時に音を絞ってもらうための装置なのです。他に飲み物を飲む時や、聞かれてはまずいことを言うとき(誰かと確認の話をする時)に絞ってもらいます。でもこれを上げ忘れて喋り続けてしまう人もいるのです。

あぁ、音声って…

音楽番組の場合

人の声を録ることから始まり、歓声も録るようになりました。しかし、マイクの種類と本数で言えば音楽番組は群を抜いて多いでしょう。

日本工学院ミュージックカレッジブログより

日本工学院ミュージックカレッジブログより

私の経験上、編成にもよりますが、バンドであればおよそ48本のマイクを立てることになります。そして、今回ばかりはガンマイクの出番はありません。ダイナミックマイク、コンデンサーマイクを用途に合わせて立てます。他にもラインものと呼ばれるギターやベースのシールドをDIに入れて音を抜いたり、ミキサーであればマイクの距離感を的確に指示したり、と経験と知識を時間をかけて獲得しなくてはなりません。

そしてテレビの場合は、PAさんが確実に必要になります。PAさんはPublic Addressの略で、放送業界においては現場で音を出したり、演奏者のケアをする人たちになります。厳密には非常に細かい業種があり、一概には言えませんので、興味のある方は一度Wikipedia PAを読むと良いでしょう。

さて、バンドの規模が大きくなればあっという間に回線は64chに到達します。そして、特番でいっぱい生バンドが出るとなると回線を抜き差ししたり、別のミキサー卓を用意したりと音声さんは非常に神経質になります。さらに、現在ではProToolsによる録音も当たり前になり、さらなる特殊技能も磨かなくてはならないのです。

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映像を取り込むことも良くあります

そしてアーティストのおつきの方々に挟まれ、もっとこういう感じに仕上げて欲しいと言われながら、少ないテイクで答えを出さなくてはならないのです。収録の場合は後日トラックダウンという整音作業をすることはもはや当たり前となっています。ひょぇー

音響さんや音効さんは音声さんではない!?

よく間違われるのは”音響さん”や”音効さん”という名前です。音響は主にPAを指し、音効さんは生放送でBGMや効果音をタイミング良く出してくれる人のことを指します。他にもMA(Multi Audio)という仕事もありますが、これは音の編集を担当する人で、音声さんは編集に立ち会うことも稀にありますが、一般的には触ることはありません。

これらはセクションが異なり、番組エンドロールでも個別で名前が流れることが多いです。それぞれ責任のある大切なお仕事なのです。

それでもみんな音声さん

こんなに種類があっても「音声さ〜ん」で片付けられてしまいます。マゾ中のマゾの音声業務をとことん紹介していきましょう。

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