テレビ技術のお仕事と社会の影

テレビのお仕事 制作編

普段何気なく見ているテレビ番組には、想像を超えるスタッフとお金が掛かっています。番組スタッフは制作と技術に別れ、出演者ですら広義のスタッフと言えるかもしれません。

制作スタッフと言えば最初に思い浮かべるのはAD(アシスタント・ディレクター)の存在ではないでしょうか?いつも怒られてばかりいる印象を勝手に持たれがちな、可哀想なキャラクターです。でも、そのイメージは大体合っています。現場では主に雑務全般・弁当の配布・テープをデジタイズ(テープからデータに書き換える作業をオフライン室等でやります)・ロケの荷物持ちをしています。きっと会社では様々な情報の事実・裏の確認(エビデンス確認)をしたり、仮払い計算をしたりと、多忙を極めていることでしょう。一体いつ休んでるのか、いや、休みが無いのか…もはや分かりません。

さて、デキる人はADからチーフAD、FD(フロア・ディレクター)になります。チーフADは番組を担当しているAD達を束ねてディレクターの指示をうまく形にする自由度が非常に高いポジションです。FDとはフロア・ディレクターで、主にカンペを出して、現場を回して仕切って行く人です。しかし、指示はサブ(副調整室)という、インカムを付けてモニターを見ている人の指示に従います。時々現場で起こっている状況を伝えたりしながら、”演出の意図”と”現場の空気感”の間を取る難しい仕事です。

制作の世界は不思議な物で、偉くなっていくと帽子をかぶる人が多いです。これは部族的な文化なのか、徹夜でぼさぼさの頭を隠しているのか、あるいはその両方なのか、検討もつきません。しかも、心無しか若手はニット系、中堅はハット系とカサが上がって行くのです。(※全ての制作が当てはまる訳ではありません)

何はともあれ、制作以外のスタッフにとっては、何か確認事項があればとりあえず帽子をかぶっている人に確認すれば、ADに聞くより間違いない回答を得られることが多いのです。

さて、辛い辛いAD、FDを経てついにディレクター(D)となるのです。きっと会社ごとに違うとは思いますが、Dは局員でもない限りいきなりスタジオ全体を仕切ることは無いでしょう。最近はディレクター自身でカメラを持ってロケ等を撮影し、編集をすることから始まることが多いかと思います。その担当した部分を、スタジオで仕切る”コーナーディレクター”なるポジションをこなすことが多いかと思います。違ったらすみません。でも大体、多分そうです。

やがて、タイミングがくれば晴れてプロデューサー(PDやPと呼ぶ)という番組を立ち上げるところから担当することになるのです。プロデューサーの更に上には演出・総合演出・編成などとまだセクションもあります。一番の勝ち組みはフリーのPDや演出でしょう。そうなれば数本のゴールデン帯のレギュラー番組を持つだけで、年収一千万台に登ります。

似て非なるセクションにAP(アシスタントプロデューサー)というものもあります。これは主にタレントケアなることをします。出演者を出迎え、タクシーや移動・現場で控え室を用意・案内したりしている印象です。何となく女性が多く、これまた何となくADからDに行けない・くじけた人がなる傾向が多い気もします。決して男尊女卑文化は無いと思いますが、女性Dというのは余り見かけない気が致します。

私の友人が最近ディレクターになり、彼の経験に基づいた所も加味して書かせていただきました。以上、技術職から見た制作の世界でした。

テレビのお仕事 技術編

技術とは、かっこ良く言えば、制作がイメージしたものを形にする仕事です。制作が欲しいカメラワーク、音、映像(色味)、照明を調整する仕事なのです。

生放送であれば、回線センターも関わります。スポーツの生放送であれば中継車など、たくさんのセクションによって番組は支えられています。

テレビ 制作で検索すれば、大体のイメージがつかめることと思います。多くの現場スタッフは放送の専門学校からやってきます。キー局は大卒の縛りがあるので、まずいません。

体質は古く、勤続年数が長い人は永遠のリーダーとなっている傾向が強いです。そのため、所謂”古い人”というのはクセがあります。これはいい時代を経験している人たちでもあり、現代の人とは余計に肌が合わないでしょう。これは制作にも言えることでもあります。その結果、慢性的に若手が育たないのです。若手はすぐやめ、振り向けばおっさんばかりなのです。

ここにこの業界の腐敗を感じざるを得ません。確かに腕のある人はいいのですが、どうやら今の日本にはお金が無さすぎるようです。バブルのいい時代をピークに、その感覚を引きずっている人は未だにいます。そのため、若手は余計な悩みを抱えることになります。

若手の仕事とは

技術よりも知識よりも、まずは人間関係を築くことに限ります。何をやっても怒られるのが関の山なので、まずは一番怖い先輩と仲良くなることがステップアップの一番の近道です。とにかく飲み、素直であればコロっと先輩の心を掌握できるでしょう。もちろん、これが一番難しいことなのですが。

ただ、ここ数年は本当に不景気で、飲むことも少なくなってしまいました。こうなってしまうとアウトです。若手と先輩の溝は永遠に縮まることはなく、仕事自体に成長を見いだせません。現場では怒られておしまいな上、安い給料となれば、バイトを掛け持った方が遥かにマシなのです。これはカメラアシスタントがカメラマンになる心得や、面倒を見てくれる人が減っているのです。音声アシスタントがミキサーになってもとても同様で、非常に孤独なの上、重たい責任を課せられます。

職人では無く、会社員

ウデの善し悪しは確かにあります。会社に貢献するという意識も決して無い訳ではありません。それでも、我々はフリーランスでは無く、サラリーマンなのです。月給をもらい、ほどほどのボーナスを貰って生活しています。昔は職人気質だったようで、ウデによっては月に100万単位稼ぐ売れっ子もざらだったとも聞いています。全く想像できない話です。

それも昔の話で、今は一般サラリーマンより残業が多く、その分給料が少しいい程度と言えます。やがて30代半ばで管理職になり、残業がつかなくなります。ここにやりがいを見いだせなくなった人は、ウデを磨きフリーのカメラマンや音声マン、VE、照明、PAになります。彼らにはボーナスはなく、1つミスをすれば職を失うリスクを背負いながら生活をしています。その相場は仕事1本で大体25000円と聞いています。拘束時間が長くなれば、その人の個人契約によって値段が上がって3万円前後になることもあるそうです。売れて、身を粉にして働けば年収はおよそ1000万円に届くでしょう。うまく軌道にのれば、自分で仕事のペースをコントロールできる魅力もあります。これはフリーの制作とも共通しているところがあります。

最近よくあるパターンとしては、実際はフリーでありながら、名目上、テレビ現場の人材派遣を管理する会社に所属していることがあります。大き目の技術会社は、忙しくなると”人”を注文するのですが、書面上個人契約をする手続きが面倒であるため、受け皿となる都合の良い会社に所属してもらうことがあるのです。これで書面上は、会社同士の契約となり、世の中がスムーズに回るそうなのです。恐らく所属会社に多少のマージンは取られると思いますが、そこはフリーの人が納得する形となっているので、そこはケースバイケースでしょう。

テレビの敵とは?

個人的には、テレビはインターネット媒体に押されているとは一概に言えないと思います。コンテンツ作りに関しては、テレビの作っているものは確かにすごいのです。最近CMでも見かけるAbemaTVでも仕事をしたことがありますが、やはりテレビと比べると規模が断然小さいです(当然と言えば当然ですが)。

未だに2chを見ていると、芸能のベースは放送メディアがソースとなっています。内部告発もメディアがメインで、ネットは大体自爆・炎上して世に露になっている傾向があると考えます。

では一体何が影らせているのか?

影の正体は社会の影

それは、経費削減による現場スタッフの負担増です。悲しいことに、テレビの敵はテレビになってしまったのです。

時代の進歩と共に、一人あたりの仕事量は膨大な量にふくれあがっています。ただし、これはテレビ業界だけでは無いでしょう。

今、日本は本当に危険な状態です。非正規雇用も問題になっていますが、もはや多くの若い正社員ですら仕事に見合った給料を貰っているとは言えないでしょう。下を見ればきりが無いのも事実ですが、そこに文句を言う時間があれば、自分でさっさとなんとかしないとまともに死ぬことさえ許されない世の中です。多くの研究機関が老後の資金を算出していますが、少なくとも老夫婦で1500万円の貯金が必要だと言われています。年金の支給は年々引き上げられ、税金も上がり、さらには今の労働年齢は65歳までは当たり前です。私は今年30歳になりますが、きっと70歳を超えても働くことになるでしょう。

ネットの普及は、色々なものを身近にしましたが、本質的な物を遠くに置き去りにしています。SNSでコミュニティを作っているのは、本能的な”救い”を求めているからだと私は考えます。人間はやはり一人では生きていけないもので、例えば上京した人にとっては、適齢期に結婚するのはとても良い選択肢だと思います。とはいえ今日本は新しいフェーズに突入しつつあります。

はっきり言って、私は自分の両親の面倒を見切る自信がありません。認知症になってしまったら最後です。私の祖母は重度の認知症で、たまたま良い仕事についている父親だったから施設に入れることができています。もしも、自分の両親がそうなったら。そんな将来を考えた時、あなたは結婚をして子供をしっかり育てられますか?死ぬまで働けますか?

大体は、なんとかなるはずなんです。追い込まれた時の人間は確かに強いです。ただ、この漠然とした不安がこの社会の影の正体だと思うのです。この闇を払拭しない限り、少子化は進み、人は働く意義を失うでしょう。

人間は考える生き物なのだから、当然希望を持つ必要があります。結婚し、子供を産み育てることは生命の使命で、非常に美しいことだと思います。ただ、私は同時に己の心身の健康を維持する必要があると考えたのです。

いい仕事をしたい!と思っても、それを実現できる環境は残念ながら少ないです。今のテレビ業界がそれに当てはまります。やがて、惰性で働く人が多くでてきます。真面目な人は精神を病み、最悪の結末として自殺を選択する人もいます。

なんだか暗い話になってしまいました。

なにはともあれ、私は希望をもって人生を全うしたいと、そう考えているのです。私はとても貴重な経験をさせていただきましたので、このテレビというズレた世界を笑い飛ばして次のステップに行かせていただこうと、そう考えているのであります。

次回は音声さんの真実について、おもしろおかしく迫ってみます!!

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