DAY2 診断から緊急手術
午前7時起床
冗談じゃない。寝てから2時間も経って無いんだぞ、しかもこっちは病人だ…なんて悪態を付きたくなるが、目を覚ますなり血を抜かれた。医師がうまかったのか、体が起きてなかったからか、痛みも感覚も無い。
8:30
ついに主治医がやってきた。この時の第一印象は典型的な「イヤな人」そのものであった。病室に入るなり、大きめの声で なんだ! 暗いなぁ!と言い、明かりを付ければ両手はポケットの中に手を入れたまま、私の症状を手短に説明した。後に、この主治医は私の状態が芳しくなく、若干ナーバスになっていたことを知る。説明が終わると、今後どうするかを言ってきた。
医師が手術を勧めてくるのだから、それが正しい選択肢なのだろう。だが、私は会社や家族各所にもまだ何も説明できていないのである。とにかく母親が10時過ぎに来ますので、そこでもう一度話しをしたいと行ったが、どうやら緊急手術には色々な事情があるらしい。
どうも手術台の空き具合を見て、さっと術を済ませる必要があるようなのだ。それを渋々決断しないでいると、いつまでたっても手術台の空き待ちということになる。妥協点として、手術をやる前提で、家族とも話しを進めたい旨を伝えた。万が一医療ミスで死んだのであれば、私の家族にかけた最後の言葉は昨夜の「ちょっと病院行ってくる」になってしまうではないか。
色々なことを考えているうちに、麻酔科に行くように言われる。ナースが車椅子に乗せて運んでくれた。この間ずっと点滴をしたままである。
麻酔科の受付で「本日手術を予定されているヨリミチおじさんですね?」と言われ、え?と言葉が漏れてしまった。どうやらもうそういうことらしい。先手必勝というか、これも主治医の根回し力ということである。大人のサバ読み力とも言えるかもしれない。
だんだん状況がわかってきた。病院側は手術を前提に各科に連絡が既に行き渡っていたのだ。確かに、これでいざというときに手術ができる。麻酔科では全身麻酔についてのビデオを見せられた。
ビデオが終わると、気がつけば居なくなっていたさっきまでのナースがどこからともなく現れ、病室に戻る。
母親が到着
ヨリミチおじさんは実家暮らしでコツコツとお金を貯めている。笑う者も多いかもしれないが、厳しい状況下にある日本経済下ではむしろ恵まれている人間であると私は認識している。終身雇用制度にも最近不安感を抱いており、老後は任務を全うしたサラリーマンですら満足に死ねない世の中になると想像している。今後はうまく投資や副業を意識的に終身ワークにしたマルチワークをせざるを得えなくなると予想している。
さて話を戻すが、比較的近所にある病院だったから良いものの、これが上京した一人暮らしであればかなり悲惨な状況であろう。恐らく、大部分の大人がそれに該当することと思う。ひとり暮らしで、即入院、即手術となると不安感は増すばかりだ。誰もが一瞬「最後の言葉」を考えると思う。楽しい時間を過ごせる親友も大切だが、信頼できる友人や同僚も常に頭の片隅に入れておく必要性を痛感した。
私の母は11時過ぎに到着した。担当医は恐らく、そこそこ偉い人で、このときの説明はアシスタントの人が代わりに丁寧にしてくれた。
説明用紙というほぼ白紙の紙に、イラストを交え手術の作戦が書かれている。それを見ながら順を追って説明をしてくれる。説明が終わると今度は手術を受ける準備を進めることになる。
手術に向けて
手術を受けるには準備が必要だ。それは各種書類のサインもそうだが、適切な服装もこちらで用意する必要があった。この病院内にある24時間のコンビニではそれらが全て揃えられている。そこで医療用の靴下、ふんどしのようなパンツ、スリッパを購入した。
それ以外にも当然、点滴で必要な薬品を体に入れていく。手術は恐らく、予定されている手術が終わる夕方以降になるだろうと誰もが予想していた。しばらくテレビを見たりして休んでいると、母親が自己負担限度額の紙を持ってきた。これを今のうちに済ましたほうが良いだろうと言う。
自分の加入している会社の健康保険証の電話番号に電話をして「自己負担限度額の制度を使いたい」と言えば、書類を送るようにと言ってくる。サイトにあるのでプリントアウトを云々カンヌン言ってきたが、緊急入院していて、母親は機械オンチであることを説明するとすぐにお家に郵送しますと言ってくれた。
これに関しては病院は関与しておらず、我々がお会計時に書類を提出することができれば、その場で支払う負担金額の上限を決めることができる制度である。仮に支払いに間に合わなくても、書類があれば差額が返金されるので絶対に使うべき制度である。他にも、自分が入っている生命保険会社の適応範囲も確認するべきである。(退院後、会計時にもナースに自己負担限度額の申請はお済みですか?と聞かれるので、失念することはまず無いとは思うが…)
最近の病院は退院時にカードで支払うことができる所が増えている。この手術代や入院費はいったいいくらかかるのかまだ想像もつかないが(後に記載)、自己負担限度額を申請しておけば、例えば26万円以下の場合の負担金額は57,600円で済むが、この金額は所得額によって変動する。それでも知っているだけでかなり安心である。
そしてその時は突然やってくる。
手術時間は突然
13:00
ナースですら驚く時間に手術が行われることになった。その時刻はの15:15とのこと。あと2時間後に手術。どうしよう。
ナースは残っていた点滴を全開にし、すべて腕に流し込まれた。右手が冷え切る。その後、また別の点滴を打たれた。抗生剤と言っていたような気がするが、頭がボーっとし、気がつけば寝ていた。
14:35
目が覚める。残念ながらまだ手術は終わっていない。冷え切った右手は常温に戻っていた。
ここで予め用意していた手術用の靴下を履く。これの足先には穴が空いており、指先のチアノーゼなどの血行の様子が確認できるようになっている。
T字帯と呼ばれるふんどしのようなパンツを履く。これでほぼ裸の下半身と手術着を一枚になる。最後にシャンプーハットのような帽子をかぶり、手術部屋へ移動することになる。
定刻通り手術台へ
手術を行う場所へ行く所々で、麻酔科の◯◯です、外科の◯◯ですと挨拶を次々にされる。ひたすらよろしくお願い致しますと言う。そしてついに手術台に乗ると、冷やっとしますよーと四方から声がしてどんどん心電図ようのものなのか、身体中にペタペタと貼り付けられる。
テレビでみたやつだ..くらいにしかボキャブラリーが無い。もう腹を括り、どうにでもなれとなる。最後に麻酔を点滴に入れてくる。その時に医師が「ちょっと刺激を感じるお薬が体に入っていきますよーすぐに眠くなりますからねー次もまたこの部屋で起きますからね−」と言われる。
負けじと私も「確かに何かが体を巡って..足の方まで.」と言った記憶はあるが、目覚めた時は手術台ではなく、ベッドの上だった。